PS3

PS3の真実-3
BDプレーヤーとしての実力 吉田伊織 Iori Yoshida

 難を言えば、メニューにて出力端子を選択する方式であり、リビングでHDMI、自室でアナログ出力という使い分けの場合、事前にそうした設定をしておかないと絵が出ないことだ。ここは最低限の画質でもいいから、常時アナログでもHDMIでもモニター出力が得られるようにしてもらいたい。
 実際にアナログコンポーネント出力用のAVケーブルで試してみたところ、結構な高画質で驚いた次第。HDMIには譲るが、これは十分に使える。ついでにいうと、2チャンネルの音声出力についてはまったく期待していなかったのだが、妙なクセがなくバランスが良好であった。もちろん光デジタル出力やHDMI経由のデジタル伝送の方がずっと情報量が多いのだが、アナログの2チャンネル出力も棄てたものではない。
 企画担当者の話では、「特別なことはしていない」とのことだが、駆動メカをはじめとして、高性能な部品をふんだんに投入しているので、案外マトモな音になっているのだろう。小型のオーディオ装置やテレビの音声入力を使うしかないユーザーなら、適度にダイナミックレンジや周波数レンジが狭いこのアナログ接続で聴きやすい音が得られることになる。

BDプレーヤーとしても高性能

 もはやいうまでもないことだが、PS3はBDプレーヤーとしての高性能も魅力だ。すでに最も普及している新世代映像メディアの再生機なのである。それがBDの普及に大きく貢献していることは論を待たないだろう。そこで今回は、BDプレーヤーとしての能力について報告する。

アナログコンポーネント出力も
高画質

 PS3でBDを再生する場合、デジタル出力のHDMI端子で出力しないと真価が発揮されないとよく語られる。付属のAVケーブルはコンポジット映像出力のみなので当然だろう。しかしこのAVケーブルはオプションでS端子、D端子、RCA×3のコンポーネント出力端子が選択できるようになっていることに注目したい。ハイビジョン対応のD端子やコンポーネント端子を備えているディスプレイならば、多くの場合1080iや1080pのアナログ形式で高画質を出画できることになるわけだ。



PS3
PS3の裏側の結線
左端がHDMIケーブル(ワイヤワールド製)、隣がLANケーブル。60GBモデルは無線LAN対応なので、使わなくてもケーブルを装着しておいた方が音質の点で有利だ。その隣は光デジタル端子。その隣がAVマルチ端子。右端が三極型AC入力端子。ここでは付属のものではなく、ベルデン製のシールドタイプを装着している

 いや、家庭用だから色を十分乗せるようにはしているはずだが、ハリウッド映画の明暗比を際立たせる傾向を誇張せずに伝えるのは立派だ。それになによりも、「キングダム・オブ・ヘブン」(リドリー・スコット監督)のような輝度レンジが狭いところで無限階調を要求するような傾向でも、見事に精妙な陰影表現を見せるのだから素晴らしい。逆にいうと、録画機やアメリカ向き再生機は、こういうローキーな絵の濃密な雰囲気が単調に見えることがあり、画質を作り過ぎではないかと思うことがある。

DVDも高水準

 それと1080iで出画するDVDも素晴らしい。DVDプレーヤーのDVD-A1XVと比べても一歩も引けをとらない緻密な絵なのだ。もちろん「デュエリスト」(リドリー・スコット監督)のような泰西名画調も実に精妙だ。うっかりするとハイビジョンソフトだと勘違いしそうなくらい、輪郭が滑らかで細部までよく彫琢された映像品位だ。これは画素補間の演算パワーに余裕があるからだろう。
 というわけで、HDMIの画質はリファレンスに使える水準だと判明した。ゲーム機でこういう事態になるとは思いもよらなかったが事実である。ただし、ソフトのチェック用に積極的に使い出したのはごく最近。音質への不安があったからだ。

HDMI出力の威力

 とはいえ、本命はやはりHDMI接続である。デジタル映像出力は1080pが可能だし、音声の非圧縮デジタルマルチチャンネル出力に対応する手段はこれしかないからだ。このHDMI出力について、自宅では映像と音声をAVアンプのVSA-AX4ASiで受け、それ経由のHDMI出力をプロジェクターのDLA-HD11Kに接続して出画している。

 その条件でじっくり視聴すると、BDレコーダーを明らかに越える画質と音質が得られてこれは本当に驚きだった。特に画質が凄い。
 これまでチェックしたことのある録画機やアメリカで発売されている再生機では、華やかなトーンを狙い、明部の鮮度感や明色の透明感を強調する絵作りの傾向があったのだが、PS3は正攻法だ。ガンマ特性をいじったり、どのようなソフトでも高彩度にしつらえるというような作為が感じられないのだ。



PS3
オプションのAVマルチケーブル
これはRCA×3のコンポーネント端子仕様のもの。
それに2chの音声ケーブルが束ねられている

音質は?

 というのは、本格的にマルチチャンネル音声を聴くにはHDMI経由にするしかないわけで、これまでその方式による音質そのものにいい印象を持っていなかったからだ。


 それは、映像信号の隙間に音声データを分割して挿入するという難しいことをやっているからだろう。映像信号が高速になるほど音声データの分割が頻繁になるというのもなんだか心配だ。伝送帯域が有限である以上、必ずジッター(時間的なゆらぎ)が発生するし、それが映像信号に影響されるというのが固有の難しさをもたらすのだろう。
 いっそ、音声データ専用のラインを確保して実績のあるi.LINKと同等の伝送システムにした方がよかったと思う。それが叶わないとしても、大容量のバッファーメモリーを用い、受信側からデータの転送速度を指示するような双方向機能があればいいだろう。ただし、映像データと独立して音声のジッターを吸収するのは難しそうだ。やるとすると大規模な回路構成になるのかも。それについては、オーディオ大国日本の威信にかけて、HDMIを含めた高性能DIR=デジタル受信デバイスを開発してもらいたいものだ。
 それはさておき、こうした難しいHDMIで高音質を確保しなければならない。そこでノイズ対策や振動対策を施した結果、十分高水準になってきたのでようやくリファレンスに使えるようになってきた次第だ。その実際については次回報告することにする。
 DTSやDD(ドルビーデジタル)については、データストリームで伝送して十分高音質が得られるLPCM変換は微妙に質感が変わるようだ。SACDの高音質については第一回で紹介した通りだ。64bit処理、最大fs=176.4kHzのLPCM信号に変換して出力できるのは演算パワーが強大なCELLのならではだ。
 もちろんBDに多いLPCMのマルチチャンネル音声はそのままLPCMで伝送すれば、飛びぬけた高音質が労せず得られる。これは本当に高水準だ。ソフト紹介の所で報告した「イノセンス」など、一度これを聴くとすっかり洗脳された気分になり、通常音声では映像まで浅く感じられるくらいだ。
 LPCM変換の音質にしても。ドルビー・トゥルーHD音声は優秀。正規に信号処理してLPCMのマルチチャンネルに変換して相当な高音質が得られるのは目下PS3だけだ。この方式の高音質はロスレス圧縮方式だから当然だが。これについても筆者のソフト紹介コーナーを参照されたい。
 ともあれ、BD録画機での再生とは一線を画した高画質、高音質であり、当方のBDについてのリファレンスの地位を確保しているのである。これはBD普及の観点からは喜ばしいのだが、高級な再生専用機を発売しにくいということになるのは歓迎できない。各メーカーにはゲーム機ごときに負けない高級機を作ってほしいものだ。