ついにヴェールをに脱いだパイオニア TAD-R1
パイオニアの作品というより日本の誇り
性能を追求した美しさとすばらしい直線性のよい音に感嘆


日本の誇り・TAD Reference One
ユニット構成
ユニットまで自社生産する
実力から生まれたシステム

パイオニア
スピーカーシステム

TAD Refarence One

価格:¥3,150,000(税込)
詳細→Pioneer

藤岡誠 Makoto fujioka

位相特性、
指向特性に優れた3ウェイ

 採用されているユニットはCSTドライバーと呼ぶトゥイーター/ミッドレンジ同軸2ウェイユニットと2個の25cm口径ウーファー。これで3ウェイを構成する。いずれもTAD(テクニカル・オーディオ・デバイセス)の基礎開発の成果。
 CSTドライバーは3.5cmドームトゥイーターと16cmミッドレンジが同軸で合体したユニットで振動板はいずれも蒸着ベリリウム。磁気回路は2ギャップ1ネオジウム磁石構造で合理的。並列駆動される2個のウーファーとのクロスオーバー周波数は250Hzに設定されているが、裸特性は実に100Hz〜100kHz(10オクターブ)という他に類を見ない超ワイドレンジだ。その上で位相特性、指向特定ともに優れ、画期的なステージイメージを展開する。

ユニットは
TAD-M1とまったく同一

 ウーファーはφ100mmヴォイスコイル径を持ち、振動板は発泡アクリルイミドとアラミド繊維の3層構造。ダンパーはダブルダンパー方式で実に30m/m幅で振幅を保証している。また、OFGMSという世界初・特許申請中の磁気回路の開発によって電流歪を10dB以上改善していることにも注目したい。マグネットは大型ネオジウム磁石が使われている。エッジは新素材によるコルゲーションエッジ。前記ダブルダンパーと相まって振幅直線性を高めている。
 これらのユニットはTAD-M1とまったく同一であり、自社生産ならではのキメ細かなシステム化への配慮がある。ユニットまで自社生産するスピーカーメーカー/ブランドは内外において案外に少なく、多くはユニット専門メーカーに依存するがパイオニアは違う。TAD-M1→TAD-R1はまさにそれだからこそ完結出来たスピーカーシステムなのである。

ウーファーユニット分解図
周波数特性概念図



デュアル端子は背面に設置

 TAD-R1の入力端子はデュアル(4端子)方式である。デュアル入力はTAD-M1と共通するが、大きな違いはその配置だ。M1は底部に置かれていて、ケーブルの着脱あるいはバイワイヤリング/バイアンピングといった駆動方式の場合の接続変えは、その操作において実にやっかいだったが、本機は背面に設置され、操作において普通になった。

デュアル方式大型削りだしスピーカー端子


 4個の端子はバナナプラグにも対応した真鍮削り出しの大型。極太ケーブル、大型Yラグなどの接続は容易。それが最大厚27mmのアルミ押し出し材によるプレートに取り付けられている。実はこのプレートの背面部にCSTドライバー用のハイパス/バンドパスネットワーク・フィルターがマウントされている。

クォリティ部品を採用

 むろん、両フィルターは完全独立配置。使用部品を見ると、空芯コイル、ポリプロピレン・フィルム・コンデンサー、エポキシ封入無誘導抵抗器、アルミケース大容量無誘導抵抗器などの厳選されたクォリティ部品によって構成。その上でキャビネット内の音圧で加振されないようにBOX内に収容されている。2個のウーファー用フィルターはこれらと独立。使用部品は同様にクォリティ部品で構成されている。
 各定数は、音響出力特性・エナジー特性・インピーダンス特性などを最適化させると共に、特に位相管理は厳重で遮断特性のスロープも巧みにコントロールされている。


日本の誇り・TAD Reference One
デュアル入力端子とネットワーク
使いやすく便利になったデュアル端子
クロスオーバー・ネッットワーク(CSTドライバー)
クロスオーバー・ネットワーク(ウーファー)




美しく見事なティアドロップ型

 CSTドライバーが本体と完全に独立したキャビネットに収容されていたTAD-M1と違ってTAD-R1は一体型だ。ただし、CSTドライバー自体は音響的・機械的にアイソレートされておりキャビネットに対して相互に加振することはない。具体的にはダンピングブッシュ・独立発泡ガスケットを介してキャビネットに取り付けられている。むろん、周辺構造も強固に造られていることはいうまでもない。そしてCSTドライバーは後方へ4度傾けられておりウーファーとの時間差をなくしている。いわゆるタイムアライメント(時間軸の整合)がなされているわけだ。
 形態は回折効果の発生を抑え込んだティアドロップ型。その曲面はことさらになだらかである。側面から後方へ至る曲面部は「ポメラサペリ」という天然木突き板。聞く所によるとこれは通常、斑の美しい部分はせいぜい40cm幅とのことだが本機では特別に丸太からスライスし側面は一枚ものとのこと。外装加工用専用プレス装置も新たに開発。仕上げはポリエステル下地塗装と透明鏡面仕上げ。塗装工程は全20工程でおよそ3週間が費やされる。小型システムでは考えられない設備と時間が掛けられているわけだ。

サイレントエンクロージャー構造図

日本の誇り・TAD Reference One
キャビネット(エンクロージャー)
時間軸を整合し解析効果も抑え込む
エアロダイナミック・ポート・システム

スパイクはコーン型と
丸型の2種類が付属

 内部構造は写真からも理解出来るように多くのブレーシング(横隔壁)を持った構造で、すべての構造材は異種材積層材。ブレーシング材は樺材合板で21mm厚。側板は高周波加熱プレス成型された50mm厚。フロントバッフルは最大厚137mmのCNC加工合板。静的にも動的にも強固で精密。もちろん、内部定在波の発生を極小化している。

 型式はバスレフ方式。そのダクトは底部にあって、これはTAD-M1と同様だが、本機ではそのポート部にエアロダイナミックポートシステムと呼ぶ独自のフレア形状が採用され、ベース部には10mm厚アルミ板が採用されている。そしてこのベース部にねじ込み可能なスパイクがあり、スパイクはコーン型と丸型の2種類が付属。床材に対応して選択する。支持方式はガタの発生がない3点支持である。こうした本機のキャビネット構造を「新SILENTエンクロージャー」と呼んでいる。




コンパクトなようだが
堂々たる寸法比

 TAD-R1の寸法比はTAD-M1よりも奥行きが若干深くなっているものの、高さや横幅は小さい。しかし重量は20kgほど重くなっている。全体として幾分かコンパクトに感じはするが実体は堂々たる寸法比。外観としてもなじみ易さを感じさせる。その上でいくつもの進化をM1に対して見て取れるのである。
 まず、特記したいことは使い易くなったことだ。操作でいえば入力端子の位置関係。M1はデュアル入力端子が底部に配置され、スピーカー・ケーブルの交換やバイワイヤリング、さらにはバイアンピングなどに変更、接続替えを行う場合、実にやっかいだったがR1は後方、しかも最下部に位置していないこともあってそれらが容易に行える。また、3点支持方式は共通だが、R1は高さ調整可能な2種類の大型スパイクが付属しており床の材質や状態・条件に対応出来る。これに若干関連するがバスレフダクトの開口部の対抗面が独自の形態を持ったベースとなっているためM1のように対抗面のない方式と違ってバスレフレックス動作が一定化される。

アンプの負担が小さく使い易い

 このように、いわば機械構造的には明らかにM1よりもR1が進化しているといえそうだ。また、公称インピーダンスから見ても一般的にいってパワーアンプ(プリメインアンプ)との組み合せに特別な気配りを必要としない。M1は4Ωで最小値は3.2Ωであった。昨今のアンプの駆動能力からいって負担が必ずしも大きいとはいえないがそれなりにケアが必要であった。これに対してR1も公称インピーダンスは4Ωであるが最小値は4.1Ωだ。アンプ側から見ればこの差は案外に大きく、負荷として軽くなる。公称インピーダンスの差異は直接的に進化うんぬんとは無関係だとしても、アンプの動作が楽になるメリットはあり、M1よりも使い易くなったということが出来る。しかし、TAD-Rと組み合せるアンプは夢々疎かにしてはならない。


日本の誇り・TAD Reference One
TAD-R1の進化項目
構造的にも使いやすさでもM1より進化

外形寸法



音のトータル・
エナジーバランスに整合性

 TAD-R1はいうまでもなくTAD-M1の次世代、後継機。技術要素に共通項目は多いが、キャビネット構造の大幅な変化やユニット構成とそれに伴ったクロスオーバーネットワークの違いによって音質・音調傾向はかなりの相違を聴かせる。つまり、TAD-R1は、M1の延長線上に位置するのではなく、完璧に自立したひとつのシステムとして具現化されている。

 その音質・音調はひと口でいえば直線性の良さということになる。TAD-M1の鳴らし方での難しさは「いかにして低域量感を出すか」の一点にあるが、R1はこの点が単体として十分に表現されている。M1は他に類型のない。キャビネット本体の積層構造と内部形態によって内容積が犠牲になっていると思うが、R1は十分に大きいこともあり低域の豊かさと伸びがある。これによってトータルでエナジーバランスに整合性が出て来ているのである。


日本の誇り・TAD Reference One
TAD-R1の音
ひと口でいえば直線性の良い音

低域特性の違いが
聴感上に現れる

 データ上の周波数特性も±3dB。前面平均特性で見てもM1は30Hz〜20kHz。R1は25Hz〜20kHz。-10dBで見ると21Hz〜100kHzという具合に低域特性に伸張がある。数値の上ではわずかな違いだが聴感上は大きな違いとして現れている。ミッドバス・ユニットのない3ウェイなので4ウェイのM1とはまさに中低域周辺“張り”は幾分か穏やかになっている。クラシック全般の聴こえとして、好ましいと思うがパンチ力のようなエナジー感はひかえめといっていい。CSTドライバーの帯域はしなやかさの中にエナジー感があって申し分はない。
 そして感心すべきはステージイメージの素晴らしさ。臨場感をつかさどる自然な音場空間の拡がりと揺るぎない音像イメージがこれを創成する。しかし、この項目は両刃ともいえるわけでルーズなセッティングで得られるわけではない。慎重なセッティングを望みたい。


TAD Reference One



コーン型スパイクと丸形スパイク


常識を守ってセッティングする

 使いこなしの第一歩はTAD-R1に限らず部屋のどこに置くか、後方壁面、左右壁面との間隔や本体間の間隔などが重要。特に本機の場合は1台が150kgあるから事前の置き場所は慎重でありたい。低域方向量感、ステージイメージは置き場所、置き方で大きく左右される。ここでこれらの詳細について触れることはしないが、常識を忠実に守ることが肝要。
 駆動方式は当初はシングルワイヤリング、そしてスピーカー・ケーブル自体の吟味。その上でバイワイヤリング、さらにはバイアンピングという手法が面白いだろう。
 組み合せるアンプについては、本機のポテンシャル、格調からいってセパレートアンプ方式が理想だろう。もちろん、高級なプリメイン(インテグレーテッド)アンプとの組み合せもいい。しかし、その場合、システムとしての将来性、発展性は縮小すると考えられる。

重視すべきはパワーアンプだ

 セパレートアンプでも重視すべきはパワーアンプ。ここでどれがいいとはいわない。条件としては好みにもよるが、固有のキャラクターを持たず、瞬時電流供給能力が大きく、負荷に対する出力直線性に優れたタイプが適合する。趣味の範囲でいえば真空管パワーアンプも面白いと思うが、歪率、SN比、周波数帯域、Dレンジなどを十二分に確保するためには力不足といわざるを得ない。内外の可能な限り上質な製品を求めるのがやはり大切だろう。


日本の誇り・TAD Reference One
TAD-R1の使いこなし音
組み合わせるアンプはセパレートにしたい

 むろん、プリメインアンプ、デジタルプレーヤーも上質であることは必要だが、まずはパワーアンプを入念に探し求めることである。
 こう見てくるとTAD-R1は使いこなしにおいてセッティング以外は特別に難しい手続きを必要としない。この意味でも使いこなしは楽だといえそうだ。なお、2種類のスパイクは設置する床の条件であらかじめセットしておくこと。なにしろTAD-R1は150kg! つまりはこれも常識の範囲で選択ということになる。
TAD-R1