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村井 裕弥 |
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プッチーニ・アリア集を聴いたら、次は全曲盤DVD(ワーナーWPBS-95011)に挑戦してみよう。83年コヴェントガーデン王立歌劇場で収録された《マノン・レスコー》だ。キリは38歳か39歳。騎士デ・グリュー役ドミンゴは41歳か42歳。うん。まだ声に軽みを残しているところが貴重。この輝かしさとしなやかさは、現在の彼には求められぬものだ。シノーポリの指揮もすごいな。無駄な音符は1つもないという鳴らし方。1つ1つの音が、生き物のようにはじけ飛び、別個の意思を持って転がっていく。演出はゲッツ・フリードリヒだが、その割に舞台は当たり前なリアリズム路線。あの《タンホイザー》や《ローエングリン》、《指環》と同じ人なの!? ホントに。
題名役キリは、第1幕、「わたし、これから、父の意思で修道院へ行くんです」という清楚な乙女くささでイッパイ。しかし、そのマノンを拉致しようと近づく、王の財務官ジェロント(超スケベちっくなおっさん)。彼の誘いに乗ろうとするマノンの兄(昨夏ザルツブルクの《コジ》で好演したトーマス・アレンだ)。しかし、そうはさせじ。マノンへの思いに燃えるデ・グリューは、ジェロントが用意した馬車もろとも、マノンをさらってしまう。フツーなら、これでハッピーエンド。しかし、マノンの兄はこういうのだ。「妹は貧乏が嫌い。学生の懐は、すぐ底をつくから、妹は、またあなたのところへやって来ます」
だから、第2幕は、財務官ジェロントの別宅で始まる。「そんな阿呆な」と突っ込みたくなるが、マノンはデ・グリューとの生活が(というより貧乏が)嫌になり、ジェロントの愛人になったのだ。肝心のキリは、第1幕における清楚な乙女とはまったくの別人。贅沢の限りを尽くす愛人マノンを、いかにもそれらしく熱演(別に声色変えてるワケじゃないのだが、そう聞えてしまう)。
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そこへ現れる兄も、もちろん妹のおこぼれをちょうだいして、衣装が俄然ゴージャスになっている。しかし、マノンは兄に訴える。「ああ。くちづけを返して。熱いくちづけを返して」こらっ。そんなにデ・グリューのことが好きなら、ジジイの愛人なんかになるんじゃねぇ!!(つづく)
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