村井 裕弥

そんなこんながあって、青森発の寝台特急日本海4号には、ほうほうの態(てい)で乗り込んだ。日本海のB寝台は、上下2段。その2段が対向して、向こう三軒両隣ならぬ上下2段向かい合い!(フルムーン夫婦グリーンパスでは、B寝台にしか乗れないのだ)
 向かいベッド下で休まれるスキンヘッド老紳士は、すでに浴衣に着替えられておられる。ちなみに、この浴衣は無料。お持ち帰り不可。この老紳士、ひとこともしゃべられぬ内にお休みになられるから、「まあこっちも静かにしているしかないか」という感じで、以後、ウチのやつとの会話は手話のみとなる!
 「おい。お前、疲れてないか?」
 「大丈夫よ」
 「このサラダ喰うか?」
 「少しいただく」
 「カップ酒呑んでもいい?」
 「――あけてあげる」
 こんな感じで。(強い光で刺激しちゃいかんと思ったから、お弁当の写真も撮ってない)
そうこうする内に、空いていた(老紳士真上)ベッドにも、ご高齢の婦人が入られる。とにかく、この寝台特急は停車駅が多いから、少しずつ少しずつ乗ってくる。
 それはよいのだけれど、向かい合うベッドでお休みのお二人(人生の大先輩)を気にしてか、いくら呑んでも、酔いが回らないぞ! カップ酒が、どんどん空になっていく。
 「ねえ。あしたの朝は早いから、そろそろ寝た方がいいわよ」
 「わかった」
 そんなことを、10本の指と顔で言い交わし、「寝られないだろうなぁ」と覚悟して、床に就いた。そうしたら、あっという間に、意識を失い、気がつくと、もう金沢じゃないか!?
 これで、旅は3日め。雨足は、昨夜の青森ほどではない。しかし、「上がった」とは言い切れない。ウチのやつも自分も、金沢を歩くのは、20代前半以来だ。さて。いかがしたものか。
(つづく)