村井 裕弥

最寄り駅に到着すると、信川さんはすでに改札口でお待ち〜
(5年前も、こうやって迎えてもらったっけ)。こちらは、2週間前に大恥かいたばかりだから、視線を合せるのもつらいが、とりあえずぺこり。こういうとき、「これから、オーディオの奥義を伝授してつかわす。ええい。頭(ず)が高い。控えおろう」などと威張らないところが信川さんの奥ゆかしさだ。
 いや。それどころか、「ひどいなぁ。来るなら来ると、早く教えてくださいよ。きょうはたまたま休みなんだけど、D/Aコンバーターを作ってたから、部屋の中、パーツだらけで、片付けるのたいへんだったんだから。まあ、わが家の玄関前に仁王立ちして、『入っていい?』と電話してきた山本会長よりはまし(笑)ですけど」などとおっしゃる。
「でも、村井さん、これから大急ぎで旭川に行かなきゃって、『オーディオ探訪』に書いてましたよね。逸品館やJimmyJazz工房のレポート、もっと読みたかったのに、いきなり終わっちゃうから、びっくり」
 「あれから、ホントに旭川へ行ってきたんですよ。だから、続きが書けなくて」
 「それが、何で神戸に?」
 「何たって、フルムーン夫婦グリーンパス(笑)だから、今日本一周旅行の真っ最中」
その話題はほどほどで切上げ、上がり込むなり、信川サウンドを聴かせていただく。アンプ(トライオードTR-2)とスピーカー(ヤマハセンモニ)は、5年前とまったく同じ。しかし、出てくる音がまるで違う…。
 「これじゃ、わが家をあとにして、『耳直し』したくなるワケだよ。ふ〜っ。たまらんなぁ」
余計な音を出さない(付帯音の徹底排除)、過度な色気をねらわないという点では、5年前との共通点がないワケでもない。しかし、その結果「物足りなさを感じてしまった5年前」と異なり、現在の音は「肉も魚も使わない精進料理なのに、満足感たっぷり」なのだ。
(つづく)