村井 裕弥

さて。つまみは、何を頼もうか。
 「あなた。おでんを頼んでよ」
 ウチのやつがそう言うから、おでん盛り合わせを頼む。ついでに、刺身盛り合わせも。
 偉そうに聞えたら謝るが、ボクは、東京の居酒屋(中の上まで)では、余程のことがない限り、刺身を頼まない。なぜって、十中八九、何を食べたのかわからないようものが出てくるから。「漁港近くの店と同じものが出てくるワケねぇだろ」「築地の美味い魚は、みんな高級料亭に買い占められちゃうんだから、あきらめろよ」なんて、皆がワイワイ言うけれど、それをあきらめていたら、いつまでたっても、日本は真の文明国になれないじゃないか。
 おおよそ3分で出てきたおでん盛り合わせは、少々煮崩れた、いかにも庶民派。「うっ。いかにも、レベル低そうだなぁ」と思いつつ、口に運ぶが、見た目に反するだしの旨みが、脳天を直撃! もちろん、それに対峙する練り製品の力も、ハンパではない。
 「な、何だ!? この味は」
 「お、おいしいわ…」
 ウチのやつも、目が点になっている。その5分後出された刺身盛り合わせも、見た目はいかにもプア(札幌すすきの「□□□□□」で食べた刺身は、見た目からしてプリプリだった)。しかし、これを口に入れてみると、じんわりじわじわ旨みがほどける。(すすきの「□□□□□」の刺身に足りなかったものが、すべてここにある!)
 「あなた。この味、何かに似てる。どこかで食べたことがある」
 「それも、ごく最近(苦笑)だろ」
 「そうよ。お昼に、メリケンさんちでいただいた出前のお寿司によーく似てるのよ。これって、やっぱり瀬戸内海の力なの?」
(つづく)