村井 裕弥

港から10分あまり歩き、「浜味館あたご」船場通店に入る。サラリーマンのお昼休みが終わる頃であったが、席はほど良くうまっている。
おひとりずつチェックしたわけではないが、半数以上のお客様は、840円の日替りランチ(コーヒー付)を召し上がっていたのではないか。確かにこれはお値打ちだ。しかし、ボクたちは再び来店できるか否かわからない旅人なので、「この店の底力」が感じ取れそうなものを注文する。
  • 1.生ビール×2
    2.かわはぎのおつくり
    3.かぶとえびのおつくり
    4.三崎あじのおつくり
    5.じゃこ天
    6.ほうたれ土佐煮
    7.鯛茶漬け×2
これだけ食べて、呑んで、すすきの「□□□□□」の半額! しかも、前日絶賛した別府「海鮮グルメ屋」に負けず劣らずの味。いや。あえて説明すると、「海鮮グルメ屋」の味はワイルドな庶民派。その分、つかみも強烈(でも、下卑たところはみじんもない)。「浜味館あたご」の味は、礼儀正しく、口数少ない紳士。でも、たまに発するひとことひとことに重みがある。
しかし、そんな紳士が雄弁に語り出したのが、ラストに注文した鯛茶漬けだ。「おだしをかけて、お召し上がりください」と言われ、「えっ!? おだしなの? お茶じゃないの?」と混乱しつつ、大振りなきゅうすに入ったおだしを「熱々ごはん+鯛刺身+小さくて丸いあられ+きざみ海苔」にかける。
ううん。微妙に加熱された鯛のもちもち感、あられに残るしゃっきり感に驚かされるが、鯛+あられ+おだし+海苔が一体となって、炊き立てごはんに押し寄せ、グシャグシャフニャフニャにならないごはんも凄い!
ボクたちはひとこともしゃべらず、この鯛茶漬けを一気に、胃袋におさめた。ああ。この満足感は、前日の「海鮮グルメ屋」をも上回るかも知れぬ。しかも、これが1人前630円(!)なんだよ。「老後は、この町で暮らそうかなぁ」真剣に、そう考えた。 (つづく)