村井 裕弥

野口さんは、名器4344と長年つれそっておられる。ただし、数年前までは「今ほどしっくりした仲」ではなかったらしい。「4344よ。お前は、どうして思い通りの音を出してくれないんだ(涙)。オーディオ誌絶賛の組合せで鳴らしてやってるというのに」
そうこうする内に、エッジがボロボロになって来たから、「どうしたものか」と考えた末、サウンドデンに電話。
 サウンドデン藤本社長が、その4344に施したのは、
□ ユニットのエッジを、黒セーム革に張替え。(これによって、音調が、より生音に近づく)
□ 磁力が落ちていたマグネットを再着磁。(立ち上がりが飛躍的に改善され、鳴りそのものも積極的になる)
□ ネットワークの調整。(コンデンサーの方構成管理など)
それらの結果、それまでバラバラに鳴っていた4本のユニットが一致結束して、フルレンジのように鳴り出し、箱鳴りなどの付帯音もきれいさっぱり消え去ったのだという。
DENTECチューンの威力に驚いた野口さんは、以後、インシュレーター、ケーブル、ノイズカットトランス、アッテネーター、デジタルパワーアンプに至るまで、DENTEC製品を購入(特に、デジタルパワーアンプに切替えたときの変化量が目覚しかったらしい)。ついには、あのSOULNOTEのD/Aコンバーターdc1.0DENTECフルチューンモデルまで購入!
聴かせていただくソフトは、もちろん『土と水』だ。――うん。冒頭のセミはまずまず。ベースもたるんだりしない。井上さんらしさ、藤井さんらしさも、しっかり出ている。「フルレンジのように鳴る4344」という言葉に、嘘はない。欠点をあげろといわれても、すぐには思いつかない。ただ、これだけの装置を揃え、きちんとセッティングしている割に、吸引力・説得力が弱いのではないか。
きっと同じようなことを、参加者全員が感じていたのだと思う。皆どこか口調が重いのだ。褒めてはいるのだが、その褒め方に、今イチ腰が入っていないというか…。
あとで確認した話だが、野口さんご自身は、このときこう感じていた。「やっぱり人がたくさん入ると、ふだんの音は出ないものなんだなぁ」 (つづく)