村井 裕弥

「ええっ!? たいへんって、何がたいへんなんだよ」
 「もうっ。口じゃうまく説明できないから、すぐリスニングルームに来てよ」
 そう言われ、リヴィングでくつろいでいたメンバーは、首をひねりつつリスニングルームへ移動。しかし、部屋に入る前に、その「たいへん」が何かは理解できた。かかっていたソフトは、おなじみ『土と水』だが、鮮度がさっきまで大違いなのだ。
「超リアルだねぇ。さっき聴いたときもいいと思ったけど、またより一層リアル。こういう音がCDで出せるんだ」
 「ヴェールの2、3枚は一気に剥ぎ取ったという感じ。廊下で聴いても、違いがわかったよ」
 「実に若々しい」
 しかし、この好調は長く続かない。ほんの数分後、「ええっ!? 何これ」という情けない音に堕落!!!!
 藤本社長はうつむき、たったひとこと「旅立たれました」。つまり、200時間に及ぶエージングの旅が始まったというのだ。この旅、山あり谷あり。特に、完了直前「どうしようもなくひどい音」を出すのだという。
しかし、この音をずうっと聴き続けるのはつらいぞ。次に訪問する上部さんは、日曜もお仕事で、「18時頃帰宅します」ということなので、まだちぃと時間がある。ここで目についたのが、天吊り3管式プロジェクター。
 「ああ。これですか? 今なら、3管式の中古が安く入手できるとあの水岡さんから聞いて、購入したんです。もちろん、各種調整も、水岡さんにやってもらいました」
というワケで、上部さんがご帰宅されるまでの1時間、このプロジェクターを使って映画鑑賞。『タイタニック』の前半を見せていただいたのだが、サブウーファーなしでここまで低音の聞える装置は珍しい。「最新型のプロジェクターに比べると、フォーカスが少々甘くて」と野口さんはおっしゃるが、いやいや、なんのなんの。フィルムの質感を味わうには、こちらの方がずうっと向いている。おかげで、野口邸を立ち去るのが惜しくなったほどだ。 (つづく)