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連載5に「次回は『No.2−マエストーソ・クラシック』を取り上げる予定」と書いた直後、博多行きの全日空便に乗った。「田圃の中のレコード家」ニイノニーノが4か月ほど前、高級住宅街に転居。その新店舗で、お得意さんたちの例会「こだわりの杜(もり)夏祭り」が開かれるというので、急遽参加することにしたのだ。(ニイノニーノ転居については、季刊『analog』誌vol.20の266頁参照)
この例会については、おととし秋の「オーディオ探訪」でもふれているが、とにかくハッピーかつストレスフリー。「この会は、こういう傾向だから、こういうことは言っちゃいかん」などという気遣い不要なところがうれしい。
「ええっ!? でも、稀少オリジナル盤を扱うショップの例会だから、専門知識が飛び交う、超マニアックな会なのでは」とか「要するに、『俺はこれ持ってるぞ。どうだ。すごいだろう』という自慢大会なんでしょう」と心配される方もいらっしゃろうが、実際参加してみるとそういう雰囲気は皆無。そりゃ専門知識はときどき出てくるけど、「上から目線」でしゃべる人がいないから、「へえ。そうなんだ」と素直に聞く気になれる(聞いていて、けっこう得した気がする)。超貴重オリジナル盤もしょっちゅう登場するが、「ねえねえ。みんな聴いて聴いて」という感じで気軽にかけてくれるから、妙に身構えることなく、音楽にひたれるのだ。
この日、ニイノニーノでどんなLPがかかったかや、野外バーベキュー(牛肉とフグ)、お得意さん同士でおこなわれたプライベート・オークションについてもレポートしたいが、当連載の趣旨がボケボケになりそうなので、以下はテレサ・テンの再生に絞って書く。そう。わが家の廉価版プレーヤーでは100パーセント魅力を引き出したとは言いがたい『輝きのテレサ・テン〜永遠の歌声』が、ニイノニーノ新店舗ではどう鳴ったのか!?

これがニイノニーノのリファレンス・プレーヤー カートリッジはZYXのR100-02 ターンテーブルはVPI。何年も前の製品らしいが、「最新型に換えると、このトーンアームが使えなくなるから、この製品を使い続けている」とのこと。肝心のトーンアームは、エミネント・テクノロジー社のモデル2? 要するにリニアトラッキング・アームなのだが、かつて雨後のタケノコのように発売された製品群にありがちな、「メカメカしい機械制御の臭い」はカケラほどもない。
プリアンプは、コンバージェントオーディオテクノロジーSL-1Ultimate MK2。パワーアンプも、同JL-2。プリとパワーを足すと、税込で400万円を軽く超えてしまう管球式セパレートである。スピーカーは、マーチンローガンCLS/UZ。静電型スピーカーの横綱という言葉がふさわしい。
このシステムで再生する『輝きのテレサ・テン〜永遠の歌声』、わが家との違いは、1にウェット感、2にしなやかさ、3に輝かしさ、4に安定感か。クォリティが数段向上したのに、CDのような「よそ行きの音」にならないところもうれしい。

ジャズが中心のショップなのに、マーチン・ローガン!! ここにニイノニーノの主張がある いやぁ。よいよいとは思っていたが、ここまでの情報が入っているとはねぇ。それでいて、わが家で聴く音と、ある種の共通点も感じられる。3万円プレーヤーで再生しても、しっかり調整されたハイエンドプレーヤーで再生しても、アナログはアナログなのだ。
「きょう聴いたレコードの中で、1番いい音だったんじゃないの?」とつぶやいておられる方がいた。「愛人」や「つぐない」を聴いて、「昔、こういう場面があったんだよね」とか「俺も、まったく同じセリフを言われたことがある」「うん。やっぱ、わしもつぐなわなきゃ」としんみりされる方もいた。(「そりゃただの妄想だよ」と突っ込まれる方も)

輝きのテレサ・テン〜永遠の歌声 もちろん、そんなことは誰も尋ねていない。しかし、アナログって、誰にも話していない個人的な心のひだに染み入ってくる、不思議な浸透圧を持っているのだ。
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