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ニイノニーノ(福岡県糟屋郡新宮町)における「夏の杜(もり)」を早めに抜け出し、筆者は博多駅前のホテルへ。テレビをつけると、ちょうど谷亮子が48キロ級準決勝で3度目の指導を受けるところであった。別に彼女のファンではないが、「あの判定はないだろ」と思うと、くやしくてなかなか寝付けない…。

CROWさんが最初にかけてくれた『ウィ・ゲットリクエスツ』 わが国では『プリーズ・リクエスト』という邦題の方が有名? 60年代から70年代にかけ、オーディオマニアの チェック用ソフトとして大人気であった 翌日曜日は、ニイノニーノ常連さんの中でも「抜きん出てよい音を出している」という噂のCROWさん宅(北九州市八幡西区)を訪問。生粋のアナログ派で、ジャズを好む、奥様は声楽を好むというのに、スピーカーはなぜか音場重視の某高解像度型!
最初にかかったLPはオスカー・ピーターソン・トリオの『ウィ・ゲット・リクエスツ』。その次は、ピエール・フルニエがソロを弾いて、ジョージ・セルがバックアップするドヴォルザーク:チェロ協奏曲であったか。あとは、何がかかったのかはまるで記憶にない。なぜって、そのスピーカーらしからぬ「ふくよかで、色っぽく、わざとらしさゼロの音」にとことん魅了されてしまったから。
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プレーヤーは、SOTAのターンテーブルに、エミネント・テクノロジーのリニアトラッキング・アームを組合せたもの。フォノイコライザーはTRIGON。プリはエアー。パワーアンプはジェフロゥランド。しかし、「これとこれを組合せれば、この音が出る」というような単純な話ではなく、壁、天井、各機器の足元などに、「おおお」とうならされるワザが隠されている。たとえば、スピーカー下に敷かれた自作ボード(いくら眺めても、さわっても、何で出来ているか見当もつかん!!)。
CROWさんいわく「これらの大ワザ小ワザは、すべて熊本市の佐藤俊哉さんがやってくれたことなんです。僕と家内は『もっとこういう音にして』と言ってるだけ」 ええっ!? ホントに? それはある意味、とてもうらやましい世界。 その佐藤俊哉さんには前日ニイノニーノでお会いしているが、どうやらニイノニーノ周辺の方々は皆彼の恩恵を受けているらしい。
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そうこうする内に、「北九州杜の会」会長NEWKSさんと若手会員Dさんが現れる。もちろん「ぜひとも皆に聴いてもらいたいオリジナル盤」を何枚も手にしてのご登場。
季刊『analog』誌vol.20をお持ちの方は、24頁をご覧いただきたい。NEWKSさんの雄姿が掲載されている。愛用されている機器は、ロクサンRadius、ガラード301+オルトフォンのアーム、EMT930st、マランツ7、8、9(いずれもオリジナル)などなど。ああ。書き写しているだけで、よだれ(笑)が。
途中参加のお二人は、ソニー・ロリンズ『ワークタイム』、クイーンのライヴ盤、ザ・モンキーズなどを次から次へとかけ換え、当時の時代状況やアーチストたちがいかに受け入れられていたかについても熱っぽく語り続ける。しかし、この「うんちく」がちっとも偉そうじゃないから凄い!! そのあと出された鶏の水だき+鯛茶漬け(CROWご夫妻による力作)も「超」が付くほど凄かったけど。
NEWKSさんが持ってきてくれた『ワークタイム』 NEWKSさんと呼ばれるきっかけは、もちろんこの『ニューヨークス・タイムス』 この時代のロリンズに、はずれ盤はない!! ニュークスとはドジャーズの投手兼外野手ニューカムの愛称で ドジャース・ファン・ロリンズの愛称でもあった
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で、いよいよお別れというときに、「村井さん。やっぱりテレサ・テンかけてくださいよ」ということになり、大急ぎで1曲かける。
ううん。前日ニイノニーノで聴いた音とまるで同じではないが、ある種の共通点を感じるのは、リニアトラッキング・アームと佐藤俊哉さんの個性なのか。ああ。こういう音をわが家でも出したいなぁ。
こういう歌手って、今なかなかいないですよね。声の強弱や高低のテクニックだけを評価したら、もっとうまい人は幾らでもいるんだけど、だからといってその分感動できるワケじゃない」
これはNEWKSさんのお言葉だが、声の強弱をDレンジに、高低をfレンジに置き換えると、そっくりそのままオーディオ論にもなりうる。
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新納裕憲さんがつぶやいていた前日のセリフも、ここに引いておこう。「アナログオーディオは、本当に楽しいです。しかしその楽しさは、細部の調整を突き詰めて、初めて味わえる世界。『名機を買いました。つなぎました』じゃ、とても到達できない境地なんです。だから私はレコード屋だけじゃなく、今回オーディオ屋も始めることにした。ウチで買ってくれた装置なら、いい音が出るまでとことん調整に行きますよ。昔はそういうこと出来る人、たくさんいたけど、今はいない。それどころか、『きちんと調整された高度な音』を聴いたことある人もいないんだから」
夕刻帰京すると、ウチのやつはこう言った。「あなた。面白い体験がイッパイ出来てよかったわね。これもアナログとテレサ・テンのおかげ。これからも、テレサ・テン持って、全国を回るんでしょ」
おいおい。そんなにはうまく行かんよ。しかし、そんなおいしいこと、出来たらいいだろうな。次回は、『スプリームステレオサウンドNo.2 - マエストーソ・クラシック』についてレポートする予定だ。
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