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メ)「おくりびと」がアカデミーの外国語映画賞を受賞した!
芦)まさかと思っていましたがホントにとっちゃいましたね。候補に挙がっただけでも凄いのに、受賞とはねえ〜。驚きました。
メ)しかも短編アニメ賞の「つみきのいえ」とダブル受賞だからすごい快挙だ!どちらもまだ見ていないの。急いで見に行かないと。世の中の動きに遅れちまう。
芦)私は「おくりびと」ってそんなに大騒ぎするほどのものかなあと言うのがホンネなんですが。
メ)あいかわらずひねたことを言う。
芦)勿論すぐれた作品と認めた上でですよ。誤解のないように。
メ)見ずに言っちゃいけないけど、俺もそんな気がする。多分アカデミーの会員に受
けのいい
要素を沢山持った映画と言うことだろうね。でも年間世界中で作られる膨大の数の作品の中から選ばれたんだから素直に喜べばいいじゃない。
芦)それは勿論そうです。
メ)・特に日本では忌み嫌われた”人の死”とか”死者を送る”と言うことを全く別の角度から見せてくれた功績は大きいと思うよ。
芦)それを考えるきっかけを与えてくれたことは事実ですね。
メ)子供の頃、街で霊柩車に出会うと親指を折って隠したものさ。不吉なことが起きるってね。
芦)高槻生まれの私もそうでしたから、日本中みんなそうだったんでしょうね。親を守るということでしょうか。
 送り人メ)大昔の話と思っていたけど俺の友人がね、お葬式に行ったあとは家に入る前に清めの塩を体にかけてからじゃないと奥さんが家に入れてくれないとか、必ず風呂に入れられるとこぼしていたっけ。今もってそんなよく分からない習慣があるのも事実だからね。
芦)ただ日本にはここ数年だけでも、もっともっとすぐれた作品があることも分かって欲しいですよ。
メ)その何倍もの数の愚作駄作があることもな。独りよがりのめちゃくちゃなものが街にあふれているじゃない。俺がひどいだろうなあと思いつつも先だって見てしまったのが「ミッドナイトイーグル」なの。テレビの番宣にあおられてしまったんだけどもう後の祭り。あまりの出来の悪さに呆れてしまった。
芦)テレビ局の思うつぼにはまったってわけですね。だけどまあそう言う作品を肥料に優れたものが出てきたんでしょう。全部が全部すぐれものと言うわけにもいかないですよ。
メ)俺としたことが、情けない。
芦)この経済状況ではなかなか思うようにはいかないでしょうが、ちょいと前まではみんなホントにお気楽に映画制作に手を出していましたからね。
メ)日本にはそれだけ金が余っていたということだねえ。
芦)能力のある人がどんどん別の分野から監督業に進出してくるのは大歓迎ですがスポンサーがあるからといって”よ〜しオレもひとつ映画でも”という安易な考えはやめて欲しいですね。
メ)やっぱりさ。今度の滝田洋二郎のようにピンク映画やロマンポルノで基礎から鍛えられた監督がしっかりした作品をモノにしてくれると嬉しいよなあ。
芦)でも根岸吉太郎とか周防正行もそれなりに大ベテランになっちゃったし。
メ)相米慎二さんは亡くなられた。
芦)曽根中生さんなんかどうしちゃったんでしょうか。
メ)そう言う意味ではかつての大監督の助監から出発した人たちも大御所になってなかなか映画製作にタッチしにくい状況のようだね。
芦)マキノ雅弘監督にもまれた沢井信一郎とかですね。「蒼き狼」(’07)以来作品にお目にかかりません。あの作品は多分ご本人も不本意な出来と思っているでしょうからまたしっかりした作品を見せて欲しいですね。
メ)CM界やMTVから出てきた人の中にも優れたクリエイターがいるね。
芦)典型は「禁煙パイポ」や「エバラ焼き肉のたれ」など数々のヒットCMを生み出した市川準でしょうね。
メ)うん。映画監督デビュー作の「BU・SU」(’87)や「つぐみ}(’90)「たどんとちくわ」(’98)は新鮮で素晴らしかった。
芦)惜しくも昨年亡くなられました。まだ60歳手前でした。≪芦の調査で「東京兄妹」(’95)がベルリン映画祭の国際批評家連盟賞を、「東京夜曲」(’97)がモントリオール世界映画祭最優秀監督賞を受賞していることを思い出した。ワイドショーで騒ぎまくったテレビ人たちよ、アカデミーだけがそんなに凄いかあ?市川準の名前を知ってるかあ!!≫
メ)監督としては早すぎる死だなあ。
芦)脚本家、音楽家、カメラマンなどスタッフや俳優といったそもそも映画作りに係わっていた方が監督に手を出すケースは割と成功するようですね。北野武は言うに及ばず。
メ)最近でいえば監督づいちゃってる津川雅彦ね。マキノ雅彦の名でとった「寝ずの番」(’06)は相当面白かったし「旭山動物園物語」も合格点のようだ。
 寝ずの番芦)でも興行的には大ヒットと言うわけにはいかず夫婦仲が?って週刊誌が騒いでいます。
メ)イラストレーターの和田誠さんが作った「麻雀放浪記」(’84)や「真夜中まで」(’99)なんかも玄人受けする作りで水準以上の出来栄えだった。
芦)芝居の脚本と演出を振り出しに今は映画監督としての方が若い人には通りがいい「THE 有頂天ホテル」の三谷幸喜は私はお呼びじゃないです。
メ)そうかなあ。俺は彼の初期の「ラヂオの時間」(’97)や「十二人の優しい日本人」(’91)を好きだったけど。
芦)そうですかねえ。そもそも「十二人」は監督が違いますよ。あれはシナリオだけです。
メ)ええっ?
芦)あれは中原俊ですよ。
メ)そうか「桜の園」(’90)を作った人かあ。当たり前だなあ。名監督だもの。あんなに若い娘たちをみずみずしく描写した監督はいないよ。「フラガール」より出来はう〜んと上だぜ。
芦)つい先だって誰かに乗せられたのかリメイクして名作をおじゃんにしちゃいましたけど。それに私は「フラガール」の方を断然評価します。
メ)どっちもいい。
芦)いい加減だなあ。中原俊は鈴木清順や大林宣彦の助監を経て日活ロマンポルノで監督デビューをした筋金入りですよ。
メ)やっぱりねえ。違うんだなあ。出がね。ロマンポルノは何作っていたんだろう?
芦)昔狂ったんでしょうね。作品名はわかりませんが宇野鴻一郎ものあたりかも知れませんね。
メ)ロマンポルノにはSMものやコメディータッチもの、色々あったけれど山本晋也の「下宿屋シリーズ」とかはジメジメしないで大好きだったなあ。
芦)そっちへ行くと大脱線。ロマンポルノ特集は別にやるとして、とにかく私は三谷幸喜は評価しないんです。特に昨年の「ザ・マジックアワー」なんか全くだめです。
メ)我々も彼も大のビリー・ワイルダーファンという点では一致しているのに。君はちょっとひねてるからなあ。
芦)そんなこと言ってるあなたこそダメなんですよ。大体いちばんどーしようもないのがテレビのディレクター上がりじゃないですか。
メ)ムフ〜ッ!
芦)あなたの大好きなドラマ「北の国から」を作った杉田成道さんだって「優駿」で コケたでしょう。素材はいいのに。もっとショックなのは久世光彦さんですね。「時間ですよ」や「寺内貫太郎一家」をはじめ数々のテレビドラマの名作を手掛けながら映画だけはだめ。「夢一族 ザ・らいばる」「自由な女神たち」とかみんなイマイチですもの。
メ)そうだね。おれはジュリーを起用したお芝居で何回かご一緒してね。そのお仕事ぶりをまじかで見ているし、小説でも泉鏡花賞までとる素晴らしい才能をお持ちの方と尊敬しているけれど劇場映画だけはどうしても評価できないんだなあ。
芦)不思議ですね。
メ)テレビで活躍していた時代には向田邦子さんという素晴らしいパートナーがいたせいもある。
芦)それにしてもテレビから飛び出していい映画を撮った人がなかなか思い浮かばないです。テレビ人しっかりして下さいよ。
メ)一言もありまシェ〜ン。何故なのかその辺のところは偉い学者先生に解剖してもらうとしてアメリカではまったく違うんだなあこれが。「十二人」の基になった「十二人の怒れる男」(’57)は今ちょうど裁判員制度の導入でいちいち引き合いに出されるけどこれを作った監督のシドニー・ルメットもテレビ出身だもんねえ。
芦)ロバート・アルトマンやスピルバークでさえ「ミステリー・ゾーン」や「コンバット」の監督をやって腕を上げてきたんじゃないですか。サム・ペキンパーは「ライフルマン」の監督だったんですよ。「RONIN](’98)など骨太の作品を取らしたら右に出る者のいないジョン・フランケンハイマーもみんなテレビで鳴らした人たちです。
 激突メ)そうだねえ。スピルバークを日本で有名にしたあの「激突」(’71)だってテレビ映画だものね。あの運ちゃんの腕やブーツだけしか見せない演出やトラックそのものを悪意の塊にしちゃう発想なんかなかなか浮かばないよ。
芦)あれを撮ったのはまだ30歳前ですよ。あなたは彼とおなじ歳でしょう。なにやってるの!
メ)あのさ。映画の場合監督は”DIRECTED BY”でテレビの場合は ”CREATED BY”ってタイトル表記されるじゃない。あれなぜなんだろうね。
芦)ごまかさないごまかさない。日本だってテレビでは「監督」じゃなくて「演出」でしょう。話をそらさないの。しっかりいい作品をつくりなさい!
メ)ハイハイ。とにかく最初のヒントから執念で企画を進めてきた本木雅弘君と作品という形に結実させた滝田洋二郎監督には拍手を送りたい。
芦)最後に一言。いくら自局が出資した作品が受賞したからと言って朝から晩まで連日のようにそのニュースや特集を流し続けたTBSはみっともない限りです。一気にここで興行収入をあげたいという魂胆でしょうが。
メ)確かに興収50億の大ヒットで出資者はウハウハ。もう一丁という商魂だろうけど。
芦)さっきあげた先人監督の作品の中にはアカデミーぐらい受賞して当然な優れたものがたくさんあることを伝えたワイドショーは一つもありませんでした。そういう伝統の中から生まれた作品でしょう?
メ)現実にベニスやベルリン、カンヌなどの映画祭では数々の作品が受賞しているけどこんなに大騒ぎすることはなかった。まあ初受賞というニュース価値はあるけどね。
芦)浮かれすぎですよ。特にTBSは。馬ッ鹿みたい。
メ)同感だね。そんな軽薄な番組の作り手たちから優秀な監督が生まれるわけはないよ。ディレクターやレポーターもそんなこと分からんのかねえ。
芦)他人事のように言わないの。あなただってそのはしくれでしょう。大体最近製作委員会に加わった放送局の映画宣伝と、一見普通の番組風でも狙いが番宣のものが異常に多いです。あれはかえって反感を呼びますよ。
メ)今日は手厳しいなあ。放送局は今相当に経営が厳しいから許しておやりよ。
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