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メ)我々の世代にとって、あちら版のチャンバラ映画で一番思い出深いものと言ったら「怪傑ゾロ」じゃないかなあ。
芦)アントニオ・バンデラスがやったやつ? あれは面白かったですね。
メ)うん、キャスリン・ゼタ・ジョーンズが色っぽくて。ちゃうちゃう、今から随分と前にやっていたTVシリーズのほう。日テレで放送していたんだと思う。30分モノのアクション映画だ。
芦)ああ。わたしもかすかに記憶があります。相手の太っちょの兵隊がガルシア軍曹で。
メ)確かそろばん塾のテレビで見たからもう半世紀以上も前になるはず。当時テレビがあるのは蕎麦屋かそろばん塾と決まっていた。
芦)そんなに前になりますかね。”はいよシルバー”の「ローンレンジャー」や「名犬リンチンチン」、「スーパーマン」と同じ頃でしょうか。
メ)白状すると「スーパーマン」も警察モノの「ハイウエイパトロール」、西部劇の「ライフルマン」も「とんま天狗」も時代的にはみんなごちゃごちゃになっちゃってる。
芦)最後のはなんですか?
メ)ええ〜っ?「とんま天狗」を知らないの? 大村昆がミゼットミゼットってやるCMも? 駄目だな〜あんなに有名なコメディー時代劇を知らないんじゃ。小型三輪トラック・ミゼットはタイでは”トックトック”ってタクシーにも使われたんだぜ。ダイハツの
芦)大村昆のCMなら♪姓はオロナミン〜名は軟膏〜♪ってのを覚えていますが。
メ)ありゃ? そっちだったかなあ。
芦)いい加減だなあ。いずれにしろ関西じゃテレビの時代劇と言ったら「てなもんや三度笠」に尽きるの! 藤田まことと白木みのるです。
メ)まあそれはどうでもよくって「とんま天狗」「ララミー牧場」や「ローハイド」は家のテレビで見たから少しあとかなあ。
芦)もう半世紀も前のことですからうる覚えでも仕方ないでしょう。
メ)でもこれだけはしっかり覚えている。「チロリン村とクルミの木」それに♪〜ボクの名前はヤン坊〜キミの名前はマン坊〜二人合わせてヤンマーだ〜♪の「天気予報」と国際証券ニュース。楕円形のワッカの中に”国際証券”とロゴの入ったニュース。これはみんなそろばん塾で見た。
芦)あの〜、あなたがどこで見たかなんて話はどうでもいいんですが。
メ)無礼者め〜。「怪傑ゾロ」の話に行くためには前置きが必要なんじゃ。「ゾロ」の舞台はどこかなあ。メキシコだったと思うけど。
芦)アメリカのTVシリーズですから、テキサスあたりかも。
メ)スペイン軍が出るからなあ。普通あちらのチャンバラと言ったらフランスやイタリアが舞台だろう。騎士が活躍する。
芦)三銃士とか四銃士ですね。いわゆる中世の時代ですかね、
メ)それなのになんでハリウッド映画ばかりでフランスやイギリス映画がないのかねえ。役者もジャン・マレーくらいしか思い浮かばない。
芦)アラン・ドロンが「黒い狐」でチャンバラをやりましたが。
メ)そのものズバリ。「三銃士」「四銃士」という傑作シリーズがあったじゃない。(どちらも’73)あれは監督がリチャード・レスターだから英国映画かなあ。
芦)ハリウッドでしょう。
 ナックメ)レスターっていい監督だよね。ビートルズの映画(ビートルズがやってくる ヤァ!ヤァ!ヤァ!’64)を撮ったかと思うと「ナック(’65)」みたいな新鮮な小品をとったりしてね。主演のリタ・トッシンハムというあんまり可愛くなかったけどあの女優はどこに行っちゃったかな。
芦)私もあの「銃士もの」は好きでした。
メ)当時大スターだったチャールトン・へストンがフランスの宰相リシュリューで悪役ぶりを見せたりして楽しめる作品だった。高校の世界史の教科書では確かイイやつだったのに映画では悪い奴だったんで面白かった。ああ学校の勉強はそんなもんだと笑っちゃったのを覚えている。
芦)わたしもなんか善政を行った人のような印象でした。
メ)ねえ三銃士って誰だか言える?
芦)私に聞かないで。自分が言えないからって。
メ)む〜。アラミスだろう。化粧品みたいだけど。それにポルトス、もう一人は誰だろう?それに勿論ダルタニアン。彼は「銃士」には混ぜないんだけれど中心なの。ちっちゃい頃から知ってたなあ。”剣豪ダルタニアン”ってね。
芦)つまらんことをよ〜く知ってまんなあ。
メ)ところがあのシリーズでは全然そうじゃないんだ。ダルタニアンはおっちょこちょいの三枚目になっていたのが面白かった。次郎長一家の石松的存在。
芦)マイケル・ヨークでしたね。
メ)そう。三銃士がオリバー・リード、それにテレ朝、昔の日本教育テレビ・NETでやってた「ドクター・キルディア」で人気を得たリチャーヂ・チェンバレン。あと一人が? だなあ。
 三銃士芦)私もはっきりしません。(芦の調査 アトス:リード、アラミス:チェンバレン、ポルトス:フランク・フィンレイ)
メ)それにしても日本の剣豪はテレビには登場しないねえ。
芦)NHKでやってませんか?
メ)国営放送はやらないの。大体NHKが扱うのは大名とか有名人で剣豪みたいなアウトローは出ないの。
芦)それは偏見ですよ。だって宮本武蔵は典型的な剣豪でしょう?
メ)そうだけど。大抵テレビの時代劇に登場するの桜吹雪の大岡越前みたいなお奉行様や銭形平次の様な岡っ引き。つまり権力側なんだ。
芦)相変わらずひねた見方ですね。でも確かにやくざ集団の次郎長一家はあまり登場しない。「三匹の侍」や「子連れ狼」はアウトローの極みですけど。
メ)そう。民放はまだいいの。NHKはやらないの。
芦)民放なら泥ちゃんそのままの「女ねずみ小僧」というのもありました。
メ)いずれにしろ”剣豪”というのはあまり取り上げられないよ。
芦)映画なら「用心棒」や「椿三十郎」は間違いなく剣豪だと思うけどフィクションですしね。
メ)そりゃあみんなフィクションだけどさ。登場するのは二刀流の武蔵にツバメ返しの佐々木小次郎、近藤勇や桂小五郎といった幕末に活躍した勤王方や新撰組。こんなところだろ。
芦)眠狂四郎は剣豪ではないですか?
メ)剣豪だからね。「豪」じゃないといけないの。剣客じゃあいけないの。強くても痩せてちゃダメ。
芦)じゃあ「木枯らし紋次郎」も駄目ですか? 大好きなんですが、特に市川昆が撮ったやつは。。
メ)作品は素晴らしいけどさ。この前テレビでやった江口洋介のは問題外だけれどね。大体やくざは剣豪とは言わないの。怖そうでも。「三匹の侍」や「素浪人月影兵庫」みたいに髭ぼうぼうじゃなけりゃだめよ。
芦)ほんとだ! NHKってあんまりむさいのはでませんね。鍋ブタで太刀を受けた塚原卜伝は?
メ)じい様も駄目。やっぱり若くなきゃあ。向こうでも一緒。「剣豪ランスロット」も若いでしょう?
芦)とても無理ですねこの話は。今の若い人たちはついてこれませんよ。
メ)剣豪といえばつい先だってまで桜が素晴らしかった愛宕神社の急階段を馬で駆け上がったのを知ってるかあ?
芦)??
メ)曲垣平九郎と言ってな。江戸時代にあの急な階段を馬で駆け上がりしかも境内には手折リの梅があってな。
芦)知りませんよ。そんなに大昔の話。
メ)バカっかも〜ん!講談の世界をしっかり勉強せんにゃいかんのだ。大体だなあ。”まがきへいくろう”とパソコンを打ってな変換するとな”まが騎兵苦労”だぜ! なんだこりゃ。兵隊さんは苦労するから”騎兵苦労”は許そう。でも”まが”は何だ! ひどすぎやせんか。それにだよ。愛宕神社の”きゅうかいだん”で出たのは”級会談”だぞ。日本語は一体どうなってるんだ。パソコンおたくのやることはこんなもんだ。何が”ユビキタス”社会だ。チャンチャラおかしい。笑止千万!
芦)だからといってあんたみたいに、頭の中が講談そのものじゃ困ります。
 愛宕神社メ)パソコンで引くと高田馬場の大立ち回りをやった”堀部安べえ”は”兵衛→べえ”だからまあまあ。額に手裏剣を沢山はさんだ荒木俣衛門は”又→俣”の一字違いだからこれも許す。伴檀衛門はもともと字を忘れちまった。だけど”まが騎兵苦労”はないだろう!!!
ちょうどチャンバラ特集で時代劇のお話になったので、最後におまけを。
今年の正月明けに「新東宝大全集」と名打たれた魅力的なイベントを新聞紙上で見つけた。新宿と六本木の二会場で行われたが、新東宝60周年イベントということで当時の映画ファンが多数詰めかけて盛り上がったようだ。生憎会場に足を運ぶことはできなかったが、あわせて発売された記念誌「銀幕の至宝 新東宝の軌跡」を手に入れることができた。
新東宝と言えば僅か15年程度の短い命のブランドだったが「明治天皇と日露大戦争」など当時から物議をかもした作品や怪しげなラインアップを並べそれはもう話題を提供してくれたものだ。「海女シリーズ」など筑波久子、三原葉子らが戦後間もないあの時代に惜しげもなく肉体をみせてくれてその扇情的なタイトルやポスターが我々ガキどもをドキドキさせたものだ。ませガキだったからそっち系の作品ばかりに気を取られていたが、な〜に結構まともな作品を作っていたことを初めて知った。
本の内容は作品紹介がメインであったが出演者の中にすこぶる懐かしい二人の名前を見つけ嬉しくなってしまった。映画少年であった私の時代劇の歴史の中に大きな位置を占めていたスターと言えば、古くはあらかん、片岡千恵蔵、市川右太衛門、大友龍太郎、、長谷川一夫、少し時代を経て錦之助や東千代之介、さらに大川橋蔵、市川雷蔵、と言う風になるのだが、実は私の大のお気に入りは黒川弥太郎なのだ。喉仏が目立った役者でそのせいか喉にかかったしゃべり方がすごくよかった。もう一人同じような名前の北上弥太郎と言う人も好きだった。子供心にも相当のイケメンという印象だった。気品があっていわば和製エロール・フリンのような存在だったと記憶している。ひねガキの私は通好みのスターを見つけては得意になっていたのに薄情にも全然顔が思い浮かばない。それでもこの二人の存在を思い出させてくれただけでもありがたかった。
黒川弥太郎は主役ではなくまた脇と言うにはもうちょっとメイン寄りのいわば主役と脇役の間にいるまあ準主役と言う存在だった。宮本武蔵なら佐々木小次郎的、清水一家なら次郎長ではなく森の石松的なラーメンなら麺やスープほどではないが相当存在を主張する、いわばチャ―シュ―といったポジション。あの人はその後一体どうなっちゃったんだろう?
錦之助全盛時代の千代之介、伏見扇太郎や昔の山城新吾、里見浩太朗もそんな存在じゃあなかったか。この本を眺めるだけで、木製の長椅子や廊下との仕切り壁の上に空いた隙間から柱に掴まって映画を見た日々が蘇る。素敵な椅子やゴージャスな設備で映画を見る今のファンたちは半世紀もあとに今の映画の時代をどんな思いで振り返るのだろうか。
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