|
強烈な暑さが一段落した盆明けの午後、横須賀で有名なビンテージオーディオショップ・マツシタHIFIを訪ねた。久方ぶりの訪問でありなかなか楽しいものがあったが、居合わせた幾人かの客たちとのおしゃべりのテーマはオーディオ談義よりも、直前に起こった駿河湾沖地震に関することであった。のんきにも地震が来たら大事な機器たちが一体どうなってしまうのかということから、いやむしろ機器を心配するよりもあんなに重たい物体が飛んできたらよけようもないと言う恐怖についてであって、みな店内を見回しながらどうせやられるならEMT930にやられたいとか、マッキンの方がいいとか実に不謹慎なのである。唯一亡くなられた方が本に押しつぶされたとのことでおそらく愛読書であったものと思え、それらに裏切られたのではご本人も浮かばれないでしょう。
痛ましい限りであるがみんなそのことを頭に描きながらしゃべくっていたわけである。
そんな訳で帰宅してから天井まで積み上がったLP、LD、それに膨大な量のVHSテープを眺めてこれはダメじゃわいと覚悟を決めたわけで。
芦)大体今どきLDやVHSってことないでしょう?ま だそんなもので見てるんですか?
メ)VHSはそのうちブルーレイにダビングしちゃおうかと思ってる。
芦)どうせエロビデオでしょう? それに潰されて死んだって私友人顔しませんから。
メ)失礼な。自分で演出した数々の名作品があるもんだからね。
芦)大した作品じゃあないのに。じゃあLDはどうなんです?
メ)君は全然判ってない。40インチくらいの液晶テレビで見る分には全然問題ないよ。特に古いモノクロの作品なんかはね。
芦)TUTAYAで借りればいいじゃないですか。あなたはシニアだから安く借りれるでしょう?
メ)そう言うもんじゃないの。ジャケが大事なの! DVDのあんなちっぽけでチャラチャラしたパッケージとは違うのよ。レーザーディスクさまは。
芦)でもブルーレイやDVDと比べると圧倒的に画質は落ちると思うけど。
 ブラニガンメ)君は知りもせんで言うのがいかん。ちゃんとLDを見たことがないだろう?あんなにキンキンきらきらした画面よりしっとりとした落ち着いた映像でなかなかいいもんさ。この前も横須賀から戻って、さて整理を始めるかと引っ張り出したらジョン・ウェインの「ブラニガン」(’75)だったんでそのままビールグラスを片手に見ちまったさ。
芦)大した作品じゃないと思いますが。
メ)いや久しぶりに見たらなかなかホンわかしていていいの。カーチェイスなんかも最近の作品のようにくたびれないでさ。
芦)大体ウェインの刑事役ってのはどうですかあ?
メ)NYだかLAあたりの刑事が犯罪者を引き取りにロンドンに行くわけよ。ほんでかの地の女性刑事と協力して犯人を追いつめるって訳なんだけどこの刑事をやっているのがあまりパッとしないジュディー・ギースンという女優でね。可愛くない分逆にホンわかした田舎娘ぶりが似合っていて、ヌボーっとしたウエインとぴったしなの。
芦)前作の「マックQ」もそうでしたが傑作とは言い難いですが、確かにかつての西部劇やアクションの大スターが出演したものってなかなかいい味わいがあるのは認めます。意外感があって。はまるといいってことですね。
メ)おんなじ刑事ものや探偵ものでは、我らがウィドマークがやった「刑事マディガン」とかポール・ニューマンの「動く標的」なんかは面白かったけど、いかにもって感じがするだろう。面白くて当然。二人の姿が目に浮かぶじゃない。
芦)「三つ数えろ!」のボギーや「白熱」ジェームズ・キャグニーのギャングなんかもう他の役者じゃ考えられないですね。
メ)君のベストワンの大傑作「さらば愛しき女よ」のロバート・ミッチャムも昔は西部劇スターというイメージだったけれど今やあの映画の寝ぼけ顔しか目に浮かばない。
芦)「刑事(デカ)」(’68)のシナトラは?私は最悪な映画という位置づけですが。
 オーシャンと十一人の仲間メ)俺は役者としての彼は大好き。どんな作品でも許しちゃう。シナトラ一家総出演の「オーシャンと十一人の仲間」「七人の愚連隊」「荒野の三軍曹」をはじめ、マックイーンと共演した「戦雲」や「脱走特急」の戦争アクション。「三人の狙撃者」「影なき狙撃者」などのサスペンスもの。「波も涙も暖かい」「誇りと情熱」「四時の悪魔」・・・・ああ挙げればきりがない。
芦)私は「黄金の腕」ですね。
メ)君は頭でっかちだからなあ。勿論いいけどやっぱり外せないのは「踊る大紐育」や「錨りを上げて」などのミュージカル。でも俺がいっとう好きなのはナタリー・ウッド、トニー・カーチスと共演したヒューマンなラブロマンス「最後の接吻」。なぜかつい最近まで「走り来る人々」と勘違いしていたもんだけど、これはシャーリー・マックレーンとディーン・マーチンと出たやつだった。
芦)分かりましたよ。大好きなのは。でもやっぱり「刑事」は最悪なんです。
メ)頑固な奴だなあ。彼はもともと小柄でアクション派ではないからいいのよ。俺は彼のLPを何十枚も所有しているシナトラ党なんだからいちゃもんをつけないの。
芦)まあ歌手がああまでいい役者になったと言うのは認めます。
メ)刑事ものや警察を舞台にした作品で意外なキャスティングの成功例と言えば喜劇専門の大スターウォルター・マッソー主演のものがあったじゃない。あのとぼけた味を生かしながら面白い作品に仕上げてた。
 サブウェイ・パニック芦)「サブウェイ・パニック」(’74)ですね。
メ)ちゃうちゃう。もっとズバリのやつ。エエ〜っと「マシンガン・パニック」だ。
(’73)
芦)どこがそのものズバリですか。わたしは「サブウェイ」しか知りませんよ。
メ)これはさ、邦題が悪いのよ。本当は「ラーフィング ポリスマン」なの。もともと同名の原作がスウェーデンのマイ・シューヴァルとペール・ヴァルーが書いた傑作シリーズ「マルティン・べック」の一冊で面白い警察ものなの。タイトルのせいで安っぽいB級映画みたいになっちゃってるけど。
芦)当たると思わないからいい加減に邦題を付けたって感じですね。宣伝部にミステリーファンがいなかったんじゃないですか。主演が主演だし。
メ)まあ確かに小説の題名「笑う警官」のままじゃ吉本が総出演のコメディーか「湾岸署」モノみたいだ。そう言えば「サブウェイパニック」のリメークが公開されたね。
芦)「サブウェイ123」ですね。リメークすること全くないのに。よくできた作品ですから。
メ)あのキャスティングじゃ何となくイメージわかっちゃうなあ。監督がトニー・スコットだから面白いとは思うけど。
 ボーン・コレクター芦)確かにデンぜル・ワシントンと言えば「トレーニング・デイ」をはじめ、寝たきりの「ボーン・コレクター」、「デジャブ」とかやたらと刑事っぽい役が多いですね。
メ)そうだろう? トラボルタだってかつての「サタデーナイト・フィーバー」はどこに行っちゃったのって感じで「ブロークン・アロー」以来悪党たちの親分役ばかりじゃない。キャスティングの面白さでは断然ご本家の勝ちだなあ。
芦)私も同感です。
メ)話は飛ぶけど日本のスターで探偵とか暗黒街もので一番好きだったのは鶴田浩二なんだけど意外性と言えば池部良かなあ。もともと二枚目スターで「青い山脈」とかで原節子あたりと共演していたスターだもの。
芦)そうですか? わたし的には池辺良ははなから完璧にやくざ路線の人です。健さんと共演した「昭和残侠伝」なんか最高です。
メ)俺は鶴田浩二。つい先だって、彼の23回忌の法要イベントがあったけどちょうどその時期に山城新伍が亡くなってワイドショーはみんなそっちへ行っちゃった。
芦)私が許せないのはマスコミの対応ぶり。亡くなった方を悪く言うのは良くないですが山城新伍を「昭和の大スター」と持ち上げるのはおかしくありませんか? 代表作にそんな作品がありますか? 「白馬童子」だけじゃないですか。”バラエティーと毒舌の大タレント”なら許します。
メ)いいじゃない。亡くなった方なんだから。最近の君少しひねてまっせ。
冬季オリンピックで活躍したスキー選手と言うよりもませガキの映画ファンだった私にとっては超ハンサムな絵にかいたような「外人」だったトニー・ザイラーが亡くなった。
彼自身が歌った主題歌も大ヒットした「白銀は招くよ」を始め「黒い稲妻」「白銀に躍る」「空から星が降ってくる」などの作品の中で見せた素敵な笑顔には男でもドキリとしたものである。
数年前にイナ・バウアーと絡めて「AVヴィッレッジ」で特集したことがある。関心のある方はエンゼルポケット秋葉原で入手してお読みいただければ幸いである。
|