|
長年愛用してきたワープロの動作が怪しくなってきて、この欄の原稿の保存が時々できなくなってきました。私のようにPCもケータイも嫌いな原始人は、自分の書いたデジタルヴィレッジを見たことがないので、SACDサラウンドの話も何処で切れたのか分からなくなってしまい、他人から指摘されて最終回が途切れていたことにやっと気がついた次第です。というわけで、お待たせしましたがようやく最終回を書きます。
大手レーベルがハイブリッド盤の製作を始めてくれたお陰で、SACDサラウンドソースの発売数は格段に増えました。ありがたいことではありますが、お金儲けの手段としてのハイブリッド盤誕生は、数の増加と同時に質の低下も引き起こすことになってしまいました。
こうした品質の不十分なハイブリッド盤を列挙してみると、@アナログ時代のステレオ録音のサラウンド化、Aデジタル時代のステレオ録音のサラウンド化、Bアナログ時代の3チャンネル録音のサラウンド化、Cアナログ時代の4チャンネル録音のサラウンド化、といった具合です。質の悪い順で並べましたが、BCはましなソースです。
録音フォーマットも、a CDフォーマットのもの、b 映像用音声流用のもの、c 上位PCM録音のもの、などが多く、オリジナルのDSD録音サラウンドはごく一部しかないのが実態です。
誕生当初「100キロヘルツまで入っている」と宣伝されたSACDの特長は、CDフォーマットよりも大きなダイナミックレンジとSN感の高さから生じる、空間表現の豊かさにあるのですが、元の録音にCDと同じフォーマットが使われていては大問題です。空間を作り出すマルチチャンネルの効果チャンネルは、ホールの残響感が主体ですが、それまで後から電気的に加工創製したものが使われては[空間表現]など無理な話です。自称オーディオマニアの某テレビ局司会者が絶賛したディスクが、ステレオ録音に人工エコー追加サラウンド盤で、しかもそれが売れに売れたという話は、サラウンド効果がいかに理解されていないかの典型的な話でしょう。
私のように再生装置を自作して、現在考えられる最高の精度を追求しながらハイブリッド盤を聴いている人間ならば、そのソースの素性は音を聞いた瞬間に分かりますが、普通の再生装置ではなかなか分かりにくいのも確かですし、低品質ソフトが、SACDやサラウンドの良さをマスクしているのも事実です。
録音の善し悪しは、パッケージメディアが登場した当初からありました。デジタル時代になっても、録音技術者や会場の違い、あるいはPCM録音とDSD録音とでは音は違います。大まかな言い方ですがPCMは骨格がしっかりした音ですが細かなニュアンスが苦手、DSDは繊細で滑らかさが強調され、力強さが出しにくい感触があります。サラウンドになると、ホール感などの三次元的空間表現がこれに加わります。
それではオーディオマニアはどうすれば良いのでしょうか。私の体験では、人の話を鵜呑みにせず、自分なりにソフトの素性を見極めるしかありません。録音方式の違いなど気にしないのでは、SACDの良さも、サラウンドのありがたみもつかみ取ることはできないのです。
ディスクの録音方式とそれぞれのレイアーに記録されている元の録音方式は、殆どのディスクの解説書のどこかに記載されていますから、ハイブリッド盤を買うときにそれを見つけるのが最良です。外側から分からない場合は、パッケージを開いてからそれを見つけだして、音の感触とレーベルの関係を自分なりに体得することです。私の経験からDSD録音の多いレーベルをいえば、ペンタトーン、ハルモニアムンディ、BIS、チャンネルクラシックス、アリアボックス、などです。最初は外れが多くても、次第に感が働くようになり、やがて初めて買うレーベルでも、音質が分かるようになります。やはり月謝が必要なのです。
|